
肉の伝道師
「牛山精肉店」
下山広幸
シモヤマ ヒロユキ
こんなことやってます
「牛山精肉店」オーナー
『牛山ベーコン』。これは東京ミッドタウンにあるDEAN&DELUCAのSelect shopの
お肉屋さんで、一流のハモンイベリコ等と並んで売られている。
燻製の香りも高く、肉自体の質が良いので非常に美味。業界では美味しいことで特に有名だ。
『牛山ベーコン』は、沼津市三園町にあるログハウスの店構えの「牛山精肉店」で作られる。
「ただ買ってもらうだけでなく、まず私たちがお客さんを知って、お客さんが私たちが売るお肉を理解して買ってもらう。」
お肉を大切に思い売る姿勢に、こだわりは何かと店主の下山さんに問いかけた。
「こだわりはありません」
この言葉に秘められた想い。それは自分が食べたいものしか売らない。こだわりというよりも当たり前のことをお客さんを思いやっているだけなのだ。
店にはお肉だけではなく各地から取り寄せられた調味料も置いてある。それもすべて、自分たちが食べたいものなのだ。食べたいものを食べてみる。そして納得をして、これは自分も食べたいからお客さんにも売る。
食べ物だけではなく応援したいものは雑貨でも絵でもなんでもお店の中にある。ログハウス調の店内では音楽ライブも開催される。
「要するに、こういう商売をしていると神様がいるな~と思うんです」
その言葉には誠実さが伝わってくる。
いいものをいいと認める。だからこそ、無駄をださない、ゴミをださない。食べ物を、命、自然を大切にしているのだ。
決して特別なことではない。普通のこととしてそう思っている。
ここで仕入れられたお肉は骨まで大切に扱われる。ガラスープ、ドックフードのおしゃぶり用の骨など本当に余すことなく全部使う。
牛山精肉店では肉の解体もする。大切に、大切に解体されていく。
その光景は美しい。熟練の技は体に染みつき今や感覚で解体することができる。
素材を大切にする。最後は心が宿る。気持ちが入る。
この気持ちを理解せずに金額だけを見て買いに来るお客さんはほとんどいないという。
正直言って、一頭一頭じっくり時間をかけて育てていく牛山さんのお肉は生産効率が悪いので少し値段も高くなる。
だが類は友を呼ぶ。質に対してわかってくれる人たちがこのお店に集まる。そのお客さんの気持ちを裏切らないように沼津産だから売るということは絶対にしない。産地にはこだわらない。
さらにここではすぐにお肉は売らない。まずお客さんとのコミュニケーションをする。そしていつ、どういう料理をするかを聞く。そして頭の中でイメージし、カットする。
お客さんが買ってよかったと、悔しい思いをせずにすむことはお店の責任という。
責任感、そしてコミュニケーションがあるからこそおいしいものにありつける。
その前には生産者がいて私たち(精肉店)がいる。
地域の生産者と精肉店も、もっとコミュニケーションをとることができたらいいな、と。




これからのこと
この業界に携わり、50年。
一代で築き上げたこのお店。
下山さんは数年後にこの場所を、想いとともに引き継いでくれる方に譲りたいと考えている。
物件と生業のノウハウとお客さまとの信頼を引き継ぎたい!という想いのある方が数年後に新しい“沼津の顔”としてお店にに立っていることがとても楽しみだ。
〈連絡先〉
牛山精肉店
〒410−0833 沼津市三園町10−21
TEL 055−932−7007 FAX 055−932−7010